(前回からの続き)
わが家の恒例となっている結婚記念日の明治神宮参拝とブルーノート東京のライブ。
いつもなら明治神宮に参拝したあとにブルーノート東京だが、今年は八ヶ岳の自宅を出るのが遅かったため順番を変更。ブルーノート東京の翌日に明治神宮の参拝へ出かけた。
少々肌寒さを感じるが、あの日と同じ澄んだ青空だ。参拝者も多い。外国人や修学旅行らしき生徒たちなど、顔ぶれも多彩だ。
参拝を終えてから、初めて明治神宮を訪れた良心くんの記念写真を撮ろうと、地面に良心くんを置いたら境内を見張っていた警備員が近寄ってきた。
「ここにモノを置いてはいけません」
危険物の類いに思われたのだろうか。いや、単にここは神聖なる場所だから物を置いてはいけないということなのだろう。警備員が常時目を光らせているそんな神聖な場所で、僕らは結婚式を挙げたのである。そう思うとますます誇らしい。
僕は良心くんを抱え、その姿を妻に撮ってもらうことにした。
角度を変えたり、場所を変えて撮影していたら、年配の夫婦に声をかけられた。
「さっきから気になっていたのよ。それは何かしら?」
良心くんの説明をすると品のいい女性は、「さわってもいいかしら」と良心くんをそっと撫でて「優しい顔をしているわねえ」と穏やかに笑った。
さらに外国人も良心くんに惹かれてやってきた。男性はカリフォルニアから来たという。良心くんを撫でて、彼もにっこり。
おそらく彼は良心くんが明治神宮と何かしら関係あると思ったことだろう。
「このコは神の子ではありません」と僕は説明し、全国を旅してまわっていることを説明した。
境内を出たあと、大樹がそびえる参道でも良心くんの写真を撮ることにした。
身長が37cmの良心くんは地面に置いてしまうと撮影がむずかしい。低姿勢になってローアングルで写真を撮っていたら、今度は若い女性に「それはなんですか?」と声をかけられ、「写真を撮ってもいいですか?」と頼まれた。
彼女はスマホで良心くんの写真を撮って大喜びだったが、東京で良心くんがこれほどウケるとは思わなかった。
昨日からたくさんの人に頭を撫でられ、良心くんは少々汚れてきたような気がするが、それは成長の証しだ。昨日と今日で良心くんは急激に成長した、ということなのだろう。
明治神宮を出た僕らは、予約しておいた南国酒家に行き、ランチを注文した。
昨夜チコ&ザ・ジプシーズにサインしてもらったCDを見てみたい。
そう頼むと、妻は首をかしげた。
CDが見あたらないという。
バッグも僕のデイパックもすべて探したけど、どこにもない。どこかに忘れてきたのだ。
一体どこで? 昨夜、赤坂の友人のバーへ行ったときはCDをバッグから出していない。ホテルでも出していない。となれば、ブルーノート東京か。チコ&ザ・ジプシーズにサインしてもらって写真を撮ったときは間違いなくあったわけだから、興奮してブルーノート東京に置き忘れたかもしれない。
ブルーノート東京に電話して問い合わせてみた。「RYOSHIN」と書かれたサイン入りCDが忘れ物として届いてませんか、と。
すると……、あった!
サイン会場に置きっぱなしだったCDが届いているという。
いやはや、マヌケな話。でも、よかった!
これから取りにいっていいか聞くと、今日は休みだから店が開いてないという。明日以降、店に来てほしいといわれたが、山梨県から来ていると説明したら、電話に出た女性は「わかりました。店の入り口に着いたら電話ください。持っていきますから」と応対してくれた。
こうして無事に僕らは良心くん宛てのサイン入りCDを受け取ることができた。
ブルーノート東京の女性スタッフによれば、サインしてもらって舞い上がるからか、忘れてしまうことが結構あるとのことで、毎日といっていいくらいサイン入りCDの忘れ物があるそうだ。
お礼のあとにお願いすると彼女はCDとともに良心くんのツーショット写真に応じてくれた。
それにしても、普通なら戻ってこない大事なCDがこうして手元に戻るなんて、これぞ、ニッポンの良心。
良心くんは着実に成長している。
photos by sherpa saito
*ブルーノート東京のホームページ http://www.bluenote.co.jp/jp/
*明治神宮のホームページ http://www.meijijingu.or.jp/