東京都で見られる野鳥を、主に写真で紹介するコラム「東京“鳥”散歩」。
第26回目の“ゲスト”は、タシギです。
いきなりですが、今回は日本における渡り鳥の区分をいくつか紹介するところから始めます。例えば、春から夏の終わり頃まで、南方より繁殖のために日本に渡ってくるのが“夏鳥”。北方で繁殖し、冬越しのために日本に渡ってくるのが冬鳥です。そして、日本より北方で繁殖し、日本より南方で冬を越し、日本にはその渡りの途中、春頃と秋頃に休息するために訪れる種のことを“旅鳥”と呼びます。
今回紹介するタシギは“シギ、チドリ”の仲間です。シギやチドリ、通称“シギチ”は日本における主な旅鳥なので、鳥好きの方々はその頃になると「シギチに会いに行くぞ!」と、シギやチドリが好む田んぼや干潟、河口などの湿地に足繁く通うようになります。
タシギも旅鳥とされますが、本州以南で条件が揃っていれば、冬越しする個体が見られ、東京近郊でも冬に観察することができます。
オスとメスはほとんど同色で同じような模様をしていて、卵のような丸っこい体に長くまっすぐに伸びた嘴を持っています。この長い嘴を使って湿地の泥に潜むミミズや甲殻類、貝類、昆虫類などを補食しています。
湿地を好みますが、名前の通り田んぼで見かけることが多くあります。特に冬に探す場合、乾いた田んぼにいることは少なく、冬でも水が抜けない、または水が張ってある田んぼでよく見かけます。単独で行動していることが多いように見受けられますが、群れで行動していることもあります。僕自身は20羽以上の群れを見つけたこともあります。
羽根の色模様は田んぼや草の茂った湿地に身を隠すのに適していて、さらに驚いたり警戒すると身を潜めてじっと動かなくなるため、探すのは容易ではなくなります。さらに警戒を強めると「ジェッ」「ジェジェッ」と鳴いて飛び立ってしまいます。
タシギは田んぼを、人の生活圏を利用する生き物ですから、当然農家の方や畦道を散歩する方がいつも近くにいます。だから、場所にもよりますが、比較的人が近くにいることに慣れていて、多少驚いてもそのままいなくなったり、まったく来なくなったりはしないようです。
しかし、鳥を観察したり撮影する立場としては、なるべく驚かさないよう、怯えさせないように行動して欲しいと思っています。警戒させてしまい身を潜めているタシギの写真とともに、僕自身への自戒の念も込めて書き記しておきたいと思います。
文&監修:三森典彰
*写真:三森典彰