東京都で見られる野鳥を、主に写真で紹介するコラム「東京“鳥”散歩」。
第27回目の“ゲスト”は、トビです。
トビは猛禽類のなかでも最も身近な存在です。カラスよりひと周りほど大きい濃茶褐色の体、飛翔している時に見やすい三味線のバチのような台形の尾羽、翼の下面にある初列風切(翼の先の分かれて見える羽根)の根元の白斑模様、そして「ピ~ヒョロロロ~」という鳴き声が特徴です。
昨今ではお弁当などを奪いに来る厄介者のイメージが強くなり、僕はとても残念に思っています。食性は主に死肉や虫、土壌動物、カエルなどの小動物ですが、先述したように人の食べものや残飯にも集まることがあります。
英名にKite(カイト、凧)とあるように上昇気流や風をつかむのが上手で、羽ばたきがとても少なく、その飛び姿はとても美しいです。パラグライダーを趣味にしている知人は「トビはパラグライダーをする人間全ての良きお手本」だと言っていました。
実は、僕は普段、自然環境の保全・再生にむけた様々な仕事をしていますが、環境教育の講師や自然観察のガイドもやっています。これは学生の頃からの目標であり夢であったので、学生時代は勉強のためにプロのガイドのお手伝いもしていました。
ある日の自然観察会、今回の主役のトビを参加者のお子さんが見つけて、「先生! あそこにタカが飛んでるよ!!」と満面の笑みで教えてくれました。その時、観察会のメイン・ガイドがこう言ったのです。「なんだ、トビか。僕がもっとすごいのを見せてあげるからね」と。トビを見つけたお子さんは泣き出してしまいました。その子は今も生きものを好きでいてくれているでしょうか。
トビを大切に思ってくれているでしょうか。
その時に僕は「参加者が見つけた生きものを、いや、身近にいる生きものを愛で、大切に思い、感動する気持ちを忘れない自然環境のプロになろう」、そう心に誓い、それは今も胸に刻まれています。現在の絶滅危惧種の多くが、かつては普通種でした。今、目の前にいる普通種を絶滅危惧種にしないためにも、身近に普通にいる生きもの、自然を大切に思える仲間を増やしていきたいと思っています。
文&監修:三森典彰
*写真:三森典彰