東京都で見られる野鳥を、主に写真で紹介するコラム「東京“鳥”散歩」。
第5回目の“ゲスト”はオシドリです。
オシドリは、仲睦まじい夫婦の代名詞になっていますが、
実は毎年繁殖相手を替えるとか、抱卵や子育てはメスのみが行なうということで、
実態は“オシドリ夫婦”ではありません。
オシの語源は愛(をし、いとをし)からきていると言われていますが、
名付けた人は生態を知らなかったのかもしれませんね。
オスの美しい羽根は繁殖期のもので、それ以外の時期は
“エクリプス”と呼ばれる繁殖期と比べると少し地味な雰囲気となります。
この時期のオスとメスの見分け方はくちばし。
メスは黒っぽく、オスは赤みがかっています。
僕がオシドリのオスの美しい羽根の中で一番好きなのが体の後方、
背面に向かって立ち上がっているヒレのような羽根。
イチョウの葉に似ているということで銀杏羽(いちょうば)と呼ぶようです。
メスにアピールする以外に役立っていなさそうなこの羽根を見ると、
生物にとっての繁殖、つまり自分の遺伝子を次代へ残すことへの執念を
感じずにはいられません。
文&監修:三森典彰
*写真:三森典彰、山崎高志