東京都で見られる野鳥を、主に写真で紹介するコラム「東京“鳥”散歩」。
第28回目の“ゲスト”は、ホオジロです。
和名の通り、いちばんの特徴はオス、メス共通の白い頬です。オスはその周りが黒褐色、メスは淡い茶褐色、赤茶褐色で、全体的な色味もメスの方が淡いように思います。英名についている「Meadow=牧草地」が示すとおり、主に農耕地や河原、比較的広めの公園の芝生地や疎林など、開放的な緑地を好む傾向があります。
繁殖に向けたホオジロのオスのさえずりは、僕には「ピッツチィー、ピッリリリッ」「ピッピチリリィ-、ピリリリィーリリリッ」みたいに聴こえます。「聞きなし」(※1)では「一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」や「源平つつじ 白つつじ」と聴こえると言われていますが、僕は「しもふさくーん、幸せそうなのに♪」とか「篠塚さーん、幸せそなの♪」と聴こえるとされた、某CMの最後に流れていた曲を思い出します、と言われても伝わらない人には全く伝わらないネタですね…(汗)
真面目な話に戻すと…鳴き声や聞きなしも大事ですが、僕の仕事であるビオトープ管理士の立場でホオジロを見てみると、緑地環境として多くの方が思い浮かべる森ではなく、開放的な環境、草地、草原という、ありそうで実はとても減っている自然環境要素を必要とする重要な指標種(※2)であると言えます。
日本は気温や雨量、土壌などの条件から、裸地を放っておくと森になっていきますし、広く平坦な土地は人間が開発してしまいます。仮に自然環境として残されていても、草地、草原を保全するにはなんらかの環境条件と人の手による管理が必要です。多くの草地性、草原性の生きものたちは絶滅が危惧されています。
ホオジロはまだまだ普通に見られる種だと思っている方も多いかと思いますが、そんな風に身の周りの生きものたちを軽く見ていると、悲しく寂しい未来が待っているかも知れません。
現在、新型コロナウィルス感染症の影響で外出や自然観察を制限されていて、身近な自然を見つめ直すチャンスです。是非この機会に身の周りの生きものたち、まだ普通に出会える生きものたちを大切に想い、好奇心と優しい目を向けてもらえたら嬉しいです。(2020年4月24日執筆)
文&監修:三森典彰
*写真:三森典彰、山崎高志
参考文献:『山渓ハンディ図鑑7 日本の野鳥 』山と渓谷社
『日本と北東アジアの野鳥』生態科学出版
※1 動物の鳴き声を人間の言葉、意味のある言語やフレーズに当てはめて憶えやすくするもの。
※2 その生育・生息により、どのような自然環境、条件が揃っているかを把握するための“ものさし”として用いられる生物種。